第一章 吸血王

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「帰れないかもしれないってこと?」 誰かが禁句を口にした。 「復活魔法というものが存在していますが…」 みんなが安堵する。 「が…」 俺は巫女の最後の語尾を聞き逃さなかった。 「ですが、神級魔法ですのでまだ呪文が見つかっておりません」 ほらクラスが崩壊し始めた。 「まだ死にたくないよ」 「家に帰りたい」 何人かが泣き出している。 「さっさと帰りたいなら、魔王を倒して魔神を殺す、それだけじゃないのかい」 俺はクラスのやつらにそう言ってやった。 その言葉がウソになると知らずに。 自分より雑魚いと思ってる俺が言うことで自分のみじめさを知ればいい。 「そうだよ、みんな」 みんなのひーろー勇馬が言い放つ。 「みんな聞いて。早く帰りたいなら、早く魔王と魔神を倒せばいい」 みんながぽかんとした目で勇馬を見る。 「安全に生き延びたい。それなら安全な方法で強くなればいい。そして強くなって元の世界に帰ればいいじゃないか」 「そりゃそうだけど」 何人かのつぶやきが漏れる。 「今ここにおいて、生き残るためには襲い掛かってくる災難より強くならなきゃいけない」 そこで、勇馬は言葉を切る。 「そのためにはみんなで魔王と魔神を倒して元の世界に戻ろうよ」 「そっか」 「そうだね」 「よし、みんなで帰るぞ!!」 「「「オオッ」」」 吐きそうなくらいなテンプレなのでかなりビビる。 特に勇馬、勉強、スポーツ、性格、どれもが完璧なやつにとっては、これも神が自分を試しているんだと思っているのかもしれないな。 このテンプレ少年はうざいけど、ここまでを地でするのは称賛に値すると思う。 そんなわけで案外簡単にクラスの動揺が収まった。 収まったところで巫女さんが俺らを案内して大広間と呼ばれる場所に連れてきた。 「ここがお食事の場となります」 たった二五人なのに広すぎやしないか? 「ここは平民の方々への食堂としての役割を果たしておりますので、広くなっております。 勇者様と平民は分けますのでご安心ください」 別に分けなくてもいいけど? 次に連れて行かれたのは聖堂と呼ばれる場所だった。 ここでは日曜日の午前中に神に祈るらしい。 水晶球が机に一つ乗せてある。 「本日はここで皆さんのステータスを確認させていただきます。この水晶球に触れていただくだけでよいので並んでください」 地獄が始まった。
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