第1章 アタル

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それがこの日、この占いに連れて行かれて1番驚いた言葉だった。 それは、普段人よりも冷静な俺にとって、不幸だとか言われたことなんかよりずっと驚くべきことだった。 どこでどうやって知ったんだこの女。 頭の上の方で2つに結んだ透明感の明るい茶色の髪、大きな黒い瞳と赤い口紅が塗られた唇が印象的なまだ10代にしか見えない幼い顔つき。そして、ピンクトーンのゴスロリ風だと思われるフリフリとレースやらリボンやらがついたメイド服を着こなす、占い師を余計に信用できなくなっていた。 しかし、こういう時こそ、この女に好かれる必要があると思い、俺はニコニコする占い師を笑い飛ばした。 「ははは、ははスゴイね、おねーさん。 さすが、いま大人気てうわさになるだけあるよね。まさか名前も言い当てられるとはなあ。思ってもみなかったからおどろきおどろき。ほんとすごいよ」 そんなアイドル並みのスマイルをかます俺の横で亜未はうんうんとうなづくと、 「亜未に連れてきてもらえてよかったでしょお」 と、彼女独特の甘い声をだす。 「まあうん、男1人ではこれないかもこんな感じのとこはね」 そこは駅地下の隅っこの一角とは思えない占いの館と描かれたオープンスペースの3個あるうちの1つの小さなスペースで、この占い師の趣味なのか女の子なら好きそうなファンシーな世界観に染まっていた。 「それもまた運命ですよ?」 「さてと、他にもお客様がいますし。これはね浅海くん。不思議な防犯ブザーなの。」 すっと手渡され、俺の手に戻ってきたハートの防犯ブザーみたいで防犯ブザーじゃない防犯ブザーのようなもの。 「先ほど見せた通り音は鳴りません。しかし、この音があなたを不幸から守る天使を呼んでくれるかもしれません。ふふ、信じてないでしょうね、その目は」 「でも、ホントですから。それと、亜未さんにもこれどうぞ。不幸は周りの人にもうつりますから」 そう言って亜未に渡したのは、この近くの神社の恋愛成就お守りだった。
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