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さすがの亜未もこんな状況は初めてなのか、見たこともない空気が抜けたような顔になっていた。おいおい、良いのかよ、と思わず俺は隣でわざとらしく咳き込んだ。
そんな俺らの思いを全く読んでいないのか、占い師は喋り続ける。
「良いですか?浅海くん、不幸が訪れたらその時必ずこれを引くんですよ。」
このハートの防犯ブザーをやたら押す占い師。ここて、最近人気のタロット占い師の店だから、と言い亜未に連れてこられた占いだった。手渡された怪しいハートの防犯ブザーを手のひらで少し転がしてみる。こんなの、どこで売られでてもおかしくない。怪しい壺でも買わされたような気分だった。
「いつも、こんなことしてるんですか?」
これで、人気の占いなのかと思う疑問をぐっと押し込め、当たり障りの無いように真意を探る。
「いやいや、あなたの不幸は特別な不幸です。なので、少しはと思ってお助けアイテムをあげたんです。全然信じてなさそうですけど、こんなのは信じた方がお得な話ですよ。これタダで差し上げるんですし」
そうにこやかに微笑む占い師の大きな瞳が、俺を捉える。
「じゃあ、有り難く身に忍ばせておきます。」
いこと亜未をうながし、俺達は仕切られた占いブースの外へ。
「お気をつけてくださいね。またぜひ、会いましょう。」
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