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不幸になるなんて、ドラマとかで聞くような安い感じが拭えない。一瞬笑えない言葉に固まるが、気を取り直して俺は冗談がキツイなんて調子で、亜未の言葉に笑ったように見せた。
ただ、不幸と聞くとどうしてもどこかで何かある気もしてしまう。上手い占いだな。信じていなさそうな奴に、1番効果のある言葉かもしれない。……ただ、この無料のお土産が謎を深める。
亜未みたいな深く考えてものを言うタイプじゃなくても、深刻な声で言われればさすがの俺でも気になる。最悪な占いデートだな、今日は。亜未に付き合わないで違う女の子と遊べばよかったかも。
「いやいやでもこれもらったし、大丈夫だよきっと」
にっと笑いつつ、亜未の頭をポンポンと撫で手を繋ごうとするとその手を亜未に振り払われる。
「哲二さん、、、」
なにかを呆然と見つめ、低い声で呟いた。
「あ、亜未「なにやってんだおまえ」
俺の声を遮る太くのぶい低い声、そして横に広がったガタイの良い、明らかに素行の悪そうな男が人混みのなかから真っ直ぐに向かってきていた。
「ま、まじ?」
1時間前に聞こえたあの話が頭を過っていた。俺はくるりとその男に自然と背を向ける。
亜未の元彼が3個上で、高校中退した男で、今はヤクザの下っ端をやっていて、悪い男好きで亜未が付き合っていたが束縛が激しくて別れた噂は、どうやら本当だったらしい。
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