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逃げようとした俺の背中をグイッと蹴られ、俺は地べたに転がされた。キャッという亜未の叫び声を聞きつつ、俺はもうすべてを諦めることにした。
「よお、こいつとなにしてんの」
痛みに耐えつつ、一応上を見上げる。
間近でみると余計に大きく、180センチくらいありそうなガラの悪そうな男だ。いやいや、こんな男と付き合っていたのに、同じ学校の色んな女とよく遊んでるだけの俺に、乗り換える気にならないでほしい。同じ悪い男でも、レベルというか、カテゴリーが違いすぎる。
「最近の流行調査?」
「、てのは、そのー冗談ですよ。ただ帰りが、同じで、クラスもね一緒だから一緒に帰っただけですよ」
努めて紳士な振る舞いをしようと声も普段通りに、そして明るさも怯えも出さずに淡々とした口調で答える。そして、だんだん四角く大きな顔が、どんどんと近づけてこられる。やめろ、近いし、臭いし、怖いし、なんて最悪なんだ。
俺は至って冷静に振る舞いつつも、どうにかしてこの状況から逃げ出したかった。
「ふざけてんじゃねえよ、ちぇ」
お腹を思いっきり蹴られ、頬をぶん殴られた。人生で初めての体験だった。痛すぎて俺は体を小さく折り曲げる。色んな女と遊んでいると、他に男がいることや、こういう喧嘩沙汰に巻き込まれることは多々ある。だけど、こんなゴリラみたいな男は、でてきたことがない。
亜未がやめてとか細い声で、泣き出す声が聞こえる。泣きたいのはこっちだ、と思う。
金輪際、タイプでもない女とは今後いっさい遊ばないようにしようと心の中で誓った。
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