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耐えられないんだ
静かな町。
僕らが住むところはよく、そう例えられた。
古くて大きい建物があるわりには、人気が少なく老人ばかりで子どがもいない。
都心から離れたこの町には、騒音もなければ娯楽施設もない。
僕はこの町が嫌いだった。
「姉さん!どこまで行くんだよ。」
「いいから、いいから。もうすぐだよ、ついてきて。」
姉は駅前で買ったホットドックの封を開けながら、嬉しそうに笑った。
この町に来るときは必ず、あのホットドック屋に寄っていく。好きなんだろうけど、いつも同じ一番安いやつしか買わない。
「…それ、飽きないの?」
僕は姉が持っているホットドックを指差した。
数枚のレタスと短いソーセージ、ケチャップばかりが上にかかった安物だ。
「え?…うんっ!だって美味しいもん。」
それでも姉は満足げに笑って頷いた。
あまりにも肯定的だったので、僕も「そっか…。」としか呟けなかった。
「ほらっ、もうすぐだよ。あっ…待って!ここからは目瞑って、私の手握ってきて!」
「ふぇっ…そんな、ガキでもないのに。…分かったよ、握ればいいんだろ!」
触れた姉の指はまるで雪のように冷たく、少し背中がゾッとした。
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