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まったく、だからいつも手袋をしろと口酸っぱく言っているのに…。
「姉さん、いつまで…」
「もうちょっと!…うん、ここら辺かな。いいよー、開けて。」
その声と共に、瞑っていたまぶたを持ち上げた。
「…!!う、わぁ…きれい、だ。」
目に入ってきた光景に、思わず感嘆の声をあげた。
それはこの、つまらない町を見渡すには絶景の場所だった。
チロチロと降り続ける雪と家々の屋根に積もった雪が、太陽の光が反射してまるでダイヤのようにキラキラと輝いている。
こんな場所があったなんて…
僕らはしばらくの間、二人でその景色を眺めていた。
「…町、出てくんでしょ。」
その静寂を先に破ったのは姉さんだった。
僕は驚きもせずにコクッと一回だけ頷いた。
「うん…。」
「そっかぁ。この町…嫌いだって言ってたもんね。」
「…うん。」
「私もね、もう、たぶん…戻ってこれないや。」
「…そっか。」
「うん。これで…最後、だね。」
歯を食い縛り、両手をポケットに突っ込んだままギュッと握りしめた。目頭がグッと熱くなってくる。
泣くな、泣くな!と自分に言い聞かせ、込み上げてくる嗚咽を必死になって飲み込んだ。
「っん、ねぃ、姉さんっ。」
「…うん。」
数回深呼吸を繰り返し、落ち着いたところでたった一人の姉に向き直った。
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