甘い香り

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 開店してすぐだったからもらったスタンプカードを作ったら割引券がオマケでついてきて、それを香さんがくれたんだ。 「あたしもあの2人と同じ時間にその店に行ってたのよ。でも事故マニアに遭遇しちゃって、怪我をして行けなかったの。まさかその後にまた2人で行ってただなんて」 「ついてねぇな、姉さん。ドンマイ」  ジャガーに見えそうな黄色のスポーツカーを運転する店長。正直、開けた窓から吹き込んでくる風にポニーテールをなびかせている店長が格好いい。  でもさ、速度メーターが壊れてんのか?吹き込んでくる風は暴風、隣を走る車が次々と後ろに流れてんだけど。  スカジャンにジーパンには到底似合わない、高さ10センチはありそうなピンヒールがいきなりブレーキを踏みつけた。  ギャギャギャギャギャギャギャンッ!!大きな黄色いジャガーが悲鳴を上げて、道路に黒い足跡を残して激しくドリフト。 「どこ見てんだよ、てめぇっ!その腐った目ん玉くりぬいて、三途の川で洗ってやろうか、あ゛ぁ゛っ!?」  最強のレディース様、降臨。突然前から突っ込んできた対向車をすばらしいハンドルさばきで避けてみせたレディース様はこめかみに青筋を立てて吠える吠える。  あいたたた。シートベルトをつけてたから大したことはなかったけどさ、遠心力でものすごい体を引っ張られて首がグギッて嫌な音がした気がする。
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