甘い香り

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 店の中に入ると、途端に甘ったるい香りがブワッと襲いかかる。でもそれも、5分くらいしたら慣れてしまって、小さい買い物かごを手に興味をひかれたものを次々と放り込んでいく。  へぇ、義理だとか言いながら結構真剣じゃん。客の目を惹きつける色とりどりのチョコをじっくりと眺め、たまに目を閉じて考え込むそぶりを見せる。  きっと、渡したい相手のことを考えているんだろう?どんな人かは会ったこともねぇから知らないけどさ。スケジュールが過密な俳優なら、一口で食べられるようなものの方がいいな。  ブラウニーやクッキーを一口サイズに仕上げるか、トリュフチョコ系か。後者なら綺麗に見せるための箱とかが結構重要になってくるな。  事故のせいで遅くなって、今はお昼くらい。それが逆に、客が少ない時間帯でじっくり見られる。  ミルク、ビター、ホワイト、ストロベリー、抹茶など定番の味はもちろん、見たこともないような味のチョコレート。カカオの濃度が違うものも細かく分かれてあって。  キャラクターの形をしたもの、中に何かが入ったもの。それから、マーブルなどの量り売り、チョコ味の焼き菓子もいくつもある。  あとは店の奥に飲食のブースがあって、スイーツやチョコレートファウンテンの食べ放題。これに店長が目を輝かせた。  最近ダイエットを始めたんじゃなかったっけ?ってツンツン突っついてやったら「み、見てただけよ」って背を向ける。
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