ユキ・シオンのバレンタイン大作戦

甘い香り

　今度は男と来れば？気になってるその男に連れてきてもらって、リバウンドするまで食べればいいさ。

　――結局俺達、じっくりじっくり、かなーり真剣に店内を回って。気づいたら３時間以上経ってた。

　車の中で試食会をして、これが美味しいだのこっちは微妙だの。どんな風に作ってるのかとか、店長はワインが合いそうだとかも言っていたな。

　最近のチョコレートは進化している。ゆず味とか、初めて食べたけどさっぱりしていたし。ドライストロベリーが入っているやつは甘酸っぱい。

　試食用にたくさん買いすぎて、食べ過ぎて、昼飯が食えなくなるほどお腹いっぱい。

　俺達はそのまま、ドライブしながら試食したチョコレートの感想や作りたいものの話をずーっとしてた。気づいたら夕方。

　家まで送ってもらうわけにはいかないので、近くのコンビニで下ろしてもらって帰宅。

　バレンタイン当日の前の休みの日にもう１度会って、その日に食材を買って作ることにした。それまでに、何を作るのかを考えておくこと。

「あぁー、遅かったらぁシオン！おかえり、ひぅっ。今日はずっとシオンがいらかったからぁ、ずぅーっとテレビ見てたんらぞぉ……ひっく、うぅ」

「おい、ヤケ酒かよ。くせっ！うわっ、いちにぃさんしぃ……ビール１４本、空にしてやがる……」

　玄関を開けて「ただいま」って言っても出迎えに来ないと思ったら、リビングのドアを開けた途端にビール臭がムアッ。