甘い香り

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 これ絶対、昼からずっと飲んでたんだぜ。午前中は何となく過ごして。でも午後になったら寂しくなって、気を紛らわせるためにビールに手を付けた。  テーブルの上、床にまで落ちているビールの空き缶達。グズグズ言いながら飲んでいた悠一の情けねぇ姿が、容易に想像できるぜ。  その悠一は、茹でダコのように真っ赤な顔で、ろれつの回らない口調で抱きついてきた。酒くせぇよ、オッサン!  明日も朝が早いくせに。二日酔いで頭が痛すぎて起きられねぇなんてほざいても、問答無用で叩き起こしてやるからな。俺って優しいだろ? 「んあ?シオン……スンスンッ。らぁんか、いい匂いがするぅ。あまぁーい、美味しそう……」 「ひあぁっ!!?ちょっ、いきなり舐めるんじゃねぇよ!と、友達がチョコレート物産展に行ってたらしくてさ、お土産にたくさん食べた……あっ、もう、悠一っ」  さすが、鼻がいい。悠一は俺に抱きついたままいつものキスをして。ビール臭がキツすぎて殴ってやろうかと思ったら、首元の匂いを嗅いできた。  しかもそのままベロンッと舐め上げて。ベロベロ、首筋やあごの下、うなじや耳を舐めまくる。  俺はチョコじゃねぇ!怒鳴って突き飛ばすか蹴ってやろうとしたら、悠一の大きな手が俺の服の裾から侵入。腹から胸を撫でられて、指先が乳首を掠ると「あんっ」と声が漏れた。  ハッ!として手で口をふさぐが、遅かった。悠一の手が止まって、恐る恐る目を向ければニヤァって、笑う。
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