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一目 雨の日
箱、小箱、筺、こばこ。
それは身近な狂気を詰めた小箱。
「ねぇ、知ってる?リナリー」
その話を最初にしてくれたのはグレンダで、それはある雨の日の放課後の事だった。
「アイボックス?」
「そ!最近流行ってる噂なんだけどね、開けたら目を盗られて箱の中に閉じ込められちゃうんだって!」
「またそんな、ジョークが過ぎるわ」
楽しげな彼女に私は呆れた笑みをひとつよこすが、彼女は意に介する様子もなく話を続ける。
「4-Bのジョージ、数日前から来てないの、知ってるでしょ?」
「ああ、噂になってるわね。なんでも、いきなり居なくなったんでしょ?」
「そう、それで、そのジョージなんだけど、いなくなる前にアーサーにメールしてたみたいなの」
「それが、何か?」
「お前箱忘れてってるぞって、写真もついてたみたいなんだけどその写真、何も置かれてないテーブルの写真でね、変なものは何も写ってなかったんですって。」
彼女は「勿論、その箱ってのも」と付け足すと一度息を整え、私に改めて向き直る。
「確かに、不気味だけど、関係あるとも思えないわ」
「えー、でもここまで来たら確実にその箱って目箱でしょ」
「馬鹿なこと言わないで。第一、そんな小さな箱にどうやったら人間が入るって言うのよ。科学的に無理だわ」
「リナリーったら、夢がないんだから」
そう言って頬を膨らませる友人に「それは夢じゃないと思うわ」と返すのも忘れない。
「もう今日は帰るわ。ママが夜勤で家に居なきゃだから」
「うーん、それならまた、明日ね」
「ええ、また明日」?
私はグレンダに手を振り、教室をあとにした。
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