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BはAの手を包み込むように握る。
B「嘘、って冷たっ!本当にそんな状態でいたのか!」
Aはその場で数回咳き込む。
A「あ、あれれ?ど、どうして手袋脱いでるのかなぁ?」
B「直に体温を当てる方が温まるって聞いたから!!」
A「ふふふ」
B「な、何笑ってんだよ」
A「やっと握ってくれたね」
B「な!?」
A「もしあのダンスパーティーで私が誘ったら君は私の手を握ったかい?」
B「……多分、できなかった」
A「妙なとこ意気地なしだもんね」
B「う、うるさいな!!手放すぞ!!」
A「あはは、冗談だよ。だって君はあの時」
B「あーあー、聞こえない聞こえない。何も知りませーん」
A「それに妙なところで意固地だし」
B「むぅ……」
雪の勢いが少し強まる。
A「……さてと、いい具合に雪が降って来たね」
B「この分だと積もりそうだ、このままだと」
A「あの時みたいに風邪をひくって?」
B「!!……ごめん」
A「大丈夫だよ、最近どうにか決まったんだ」
B「…………」
A「あの時は父様も母様もひどく慌ててたからね、なんてったって私の成人を祝うダンスパーティーの前日で私が倒れちゃったからね」
B「僕が無理させなきゃ良かったんだ」
Bの目に涙が少しずつ溢れてくる。
A「君のダンスの下手さは酷いものだから」
B「そっちだって何回も転びそうになってたじゃないか」
A、B「……………」
しばし沈黙が続く、雪の勢いが少し弱まる。
B「ところでさ、相手は誰なの?」
A「教えなーい」
B「いつ行くの?」
A「それも教えなーい」
B「でも決まって良かったよ。これで僕も安心して――」
AはBの手を放し顔を伏せる。
A「本当に?」
B「え?」
A「本当にそんなこと思ってる?」
Bはためた涙をこぼしながら拳を握る。
B「……いやだよ」
その時AがBの顔をそっと持ち上げる。
A「本当に素直じゃないんだから」
B「……悪い」
A「だからさ、踊ろうよ!今日は君の誕生日なんだから……さ?」
B「……うん」
BはAを抱きしめる、Aは静かに涙を流す。
B「踊ろう、今度は二人で、最後まで、踊ろう」
A「もう、男の子がそんな泣くもんじゃないでしょ?」
B「お互い様でしょ」
二人は静かに笑い合う。
A「踊りましょ、私の王子様」
B「踊ろう、僕のお姫様」
しんしんと雪が降り続く中、二人は足跡を消さないようにゆっくりと踊った。
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