ミニマリスト

　私の友人にFという男がいた。学生時代に同じゼミに所属したことが出会いのきっかけだった。

　Fは病的なほどに神経質で、いつも除菌用のウェットティッシュをカバンの中に入れ、事あるごとに周囲を拭いて生活していた。

　ドアノブや吊革といった他人が触った場所は、ティッシュ1枚では足りないほどだった。歯は磨きすぎて薄くなり、アイスを食べるとしみて困ると嘆いていた。

　食事のマナー、ファッション、歩き方と、目に付くもの全てにダメ出しをしてくる厄介な性格で、一緒にいると常に他人の悪口を聞かされた。気が滅入ることもあったが、そんなFの名前が私の電話帳から消えることはなかった。

大学を卒業してからは疎遠になっていたが、SNSをしていると意外にも近くで暮らしていることを知り、私の方から「会おうよ」と打診した。すると快くOKの返事がもらえたのだった。