〔2〕

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 私の住んでいる町は、東京都内といっても山の手エリアから私鉄で30分以上離れた、要するに東京都下と呼ばれる地域。  でも高校は、タバコ臭いオヤジや吐き気がするほどキツい香水に耐えながら都心まで通って今年二年目。  やっぱり放課後は渋谷や原宿で遊びたいから、田舎の学校なんて論外だよね!  有名デザイナー監修の制服、グレーのブレザー、タータンチェックのプリーツスカート、ラインが入ったワインレッドのリボンも、この高校を選んだ理由だけど。 「んんっ……定期テスト、あと1日だー! ねえミカ、明日どこ遊びに行く?」  2学期中間試験2日目が無事……ではないけど、とりあえず終わって昼過ぎのガラ空き下り電車。  誰かの頭に邪魔されず、座席から液晶モニターに映るニュースや企業CMをボンヤリ観ていた私の隣で、同じ駅から通うハルミが大きく伸びをした。 使う駅は同じだけど中学は違うから、高校に入ってから出来た友達。都心の遊び場に疎い私と違ってハルミは中学生の頃から遊び慣れているから、心強い友人だ。 「あー、カラオケ行きたいなぁ……めっちゃ歌って発散したい! でも正直、お小遣いが厳しいんだよね……」  ため息をついたタイミングで、電車はホームに滑り込む。  スクバを肩に引っかけ、改札のある上階行きエスカレータに乗ったところで真後ろのハルミがブレザーの裾を引っ張った。 「じゃさ、試験最終日。帰ったら、うちの店のバイトしなよ? お店のチラシをポスティングしてくれたらパパが、お小遣いくれるっていうんだけど1人じゃ面倒くさくて……身内だから100件で3000円だってさ。2人で頑張れば早く終わるから、そのあとカラオケ行けば良いじゃん?」  ハルミの家は個人経営の美容院だ。我が家のポストにもたまに割引クーポンがついたチラシが入っているけど、ポスティングのバイトなんて楽そうだ。 「のった!」 「フッフッフ……楽な仕事と思うなよぅ!」  片手を上げて答えると、ハルミが笑った。
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