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北国のある居酒屋の席で、地元の主婦から、こんな話を耳にした。
K峠、出ますよ。
学生時代から、あそこは出るって、みんな噂してましたから。
ただ、それがですね、その幽霊の噂と言うのが、お決まりの黒髪に白ワンピースの女だったとか、顔色の悪い中年男だったとか、四つん這いの老婆だったとか、血塗れの日本兵だったとか、人によって千差万別なんですよ。
夏になると、授業の合間の休み時間にそんな話で盛り上がったりしてましたが、よく考えてみるとみんなまだ免許なんか持ってませんし、町から30キロ近く離れたK峠まで、わざわざ自転車なんかで真夜中に出向く訳もなく…。
確かにうちの町から市内に出るには、そこを抜けるしかなくて、みんな親の車やバスなんかに乗って、それなり通った事はあって場の雰囲気は知っている。
ここに来るときには、絶対通るから、判りますでしょ?
だから私は、みんなに話を合わせながらも、K峠の幽霊話は、単なる作り話って考えてました。
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