65人が本棚に入れています
本棚に追加
1
「あの、ここですか?」
札幌グランドホテルの前に来ていた。札幌でも有名で昔からある格式高いホテルだ。
「ああ。少し小腹がすいてるから、ちょっとだけラウンジで飲むか」
先に入り口へ向け歩き出す目黒の腕を慌てて翼は掴んだ。
「なんだよ」
「飲むかですって?そんな話じゃなくて。なんでここを予約したんですか?」
翼はホテルを指差した。
「なんだ。もう忘れたのかよ。シングルルームがいっぱいだったからだろ?だから、ツインルームを予約したって言ったよな?」
「聞きましたよ、聞きましたけど」
「あれ? ツインルームにご不満かな? もしかして、俺とより近くで寝たかった?ダブルルームのが良かった? いやあ、ごめん、ごめん。そりゃあ、気がつかなかったよ、完全に俺の選択ミスだな」
目黒は自分の後頭部に手をやり、ペチペチと叩く真似をした。
「ダ、ダブル? なんでダブル?ち、違いますよ、予算削減なのに高いホテルなんてまずいって話ですよ!」
「大丈夫だよ。ここは、俺個人で金払うから」
「そういうことじゃなくて!どうしてですか?どうして、そうまでして、こんな高いホテルに泊まりたいんですか」
信じられない。
こんな高いホテルに泊まろうとするなんて。
何考えてるんだろ。
最初のコメントを投稿しよう!