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しばらく、惚けたみたいに翼は目黒の綺麗な顔を見つめていた。 理由は良くわからないが、この綺麗な顔の人は、どうやら私にキスをしたいようだ。 なんて、もの好きなんだろう。 なんで私を好きなんだろう。 世界中に沢山いる女性を差し置いての、私。 選んだ基準は、なんだろう。 不思議だ。 わざわざアンパンを買って中のアンをくり抜いてパンだけを食べる人くらいに不思議だ。 不思議の国に行くのは、アリスだと相場が決まっている。当然ながら30歳の私は、アリスには、もうなれない。 しっかり目を覚まして現実を見ないと。 翼は、 大きく頭を横に振った。 「わ、私、これ飲んだら部屋に行きますね、もう、今夜は、ゆっくりしたいので」 ようやく目黒の目力の呪縛から逃れた翼は、自分の右手首を掴む目黒の手を左手ではがした。 「いーな、それも。今夜は部屋でゆっくりしよう」 性懲りも無く目黒は翼の肩に手をまわしてくる。その手をピシャリと叩いて 「1人でゆっくりします。お風呂にも入りたいし」と翼は言い切る。 叩かれた手をふうふうしながら、 「あーいいよ。お前が先で」 と、目黒が言う。 「え?」 「だから、先に入っていいよ。俺はビールでも飲んで部屋で寛いどくから。ソバカスの湯上がり姿を見れるなんて…相当感慨深いな」 「……あ、あとにします」 不機嫌そうに翼は、そう言った。 「なんだよ」 「チーム長が寝てから、ゆっくり入ります」 「あ?なんで」 「湯上がり姿なんて、チーム長には絶対に絶対に見せたくないので」 「嘘だろ?昨日から楽しみにしてたのに。そんなの有りかよ」 少しムキになる目黒。
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