65人が本棚に入れています
本棚に追加
「何、これ…」
目黒の名前で予約してあった部屋は、確かにツインルームだった。
だったが、格が違う。
想像していたツインルームとは全くレベルが違うのだ。
モダンな和風のリビングがついた60平米はあろうかと思われる広い部屋。
翼のマンションなんか、すっぽりと入ってしまいそうだ。
和風のリビングのテーブルの上には、様々な種類のオレンジ色の花がどうだっ!とばかりにクリスタルの花瓶に豪華にいけられていた。
近づいて花を眺める。
「花だけでも高そうね」
花のひとつに指先で触れ、その花びらの柔らかさに翼は目を見張った。
柔らかい。
最近、生花なんて飾ったりしたことなかったな。花って高いから。
でも、やっぱりあると癒されるし優雅な気分になれる。
改めて翼は部屋を見まわした。
こんな部屋を予約するなんて、会長の孫はスケールが違うのね。
頭を左右に振って、翼は「あーあ、やってらんない」と呟いた。
なんか、ムカつく。
産まれながらにして、私とチーム長は、既に格が違う人生を送ってきている訳だ。
かたや、閉店間際のスーパーに行けば値引き商品しか買わない安上がりな地味目の女。
かたや、生花に囲まれた生活を優雅に送れる上に容姿共に恵まれた男。
やっぱり、違うんだ。
私とチーム長って。
落胆したように全身の力がなくなり、ふにゃふにゃになった翼は、キングサイズのベッドにゴロンと寝転ぶ。
寝転んでから、突然思い出した。
1人で飲んで待っているであろう目黒のことだ。
全く、なんでツインルームなんだか。
不満は沢山あるが、とりあえず翼は目黒を待たせないように、なるべく急いでシャワーを浴びることに決めた。
最初のコメントを投稿しよう!