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「何、これ…」 目黒の名前で予約してあった部屋は、確かにツインルームだった。 だったが、格が違う。 想像していたツインルームとは全くレベルが違うのだ。 モダンな和風のリビングがついた60平米はあろうかと思われる広い部屋。 翼のマンションなんか、すっぽりと入ってしまいそうだ。 和風のリビングのテーブルの上には、様々な種類のオレンジ色の花がどうだっ!とばかりにクリスタルの花瓶に豪華にいけられていた。 近づいて花を眺める。 「花だけでも高そうね」 花のひとつに指先で触れ、その花びらの柔らかさに翼は目を見張った。 柔らかい。 最近、生花なんて飾ったりしたことなかったな。花って高いから。 でも、やっぱりあると癒されるし優雅な気分になれる。 改めて翼は部屋を見まわした。 こんな部屋を予約するなんて、会長の孫はスケールが違うのね。 頭を左右に振って、翼は「あーあ、やってらんない」と呟いた。 なんか、ムカつく。 産まれながらにして、私とチーム長は、既に格が違う人生を送ってきている訳だ。 かたや、閉店間際のスーパーに行けば値引き商品しか買わない安上がりな地味目の女。 かたや、生花に囲まれた生活を優雅に送れる上に容姿共に恵まれた男。 やっぱり、違うんだ。 私とチーム長って。 落胆したように全身の力がなくなり、ふにゃふにゃになった翼は、キングサイズのベッドにゴロンと寝転ぶ。 寝転んでから、突然思い出した。 1人で飲んで待っているであろう目黒のことだ。 全く、なんでツインルームなんだか。 不満は沢山あるが、とりあえず翼は目黒を待たせないように、なるべく急いでシャワーを浴びることに決めた。
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