1

2/39
前へ
/39ページ
次へ
膨れて怒っている翼を見ても、あくまでも余裕がある様子の目黒。 「俺、足が長いから大きいベッドじゃないと、眠れないんだよ。足がはみ出してさぁ。それにいくら仕事だからと言っても、上司と狭いツインルームじゃ嫌だろ?俺は大歓迎だけど。だから、あえてココにしたんだけどなぁ」 目黒は、翼に近寄り思いついたように声を上げた。 「それとも…あっ、アレか?もしかして俺の近くで寝たいから、お前は広々としたツインルームより狭いツインルームの方が良かったのか?」 目黒は翼に向いて、嬉しそうな笑みを浮かべている。 「まさか!!広い方が離れるしっ、いいに決まってますよ」 「じゃあ、ここでいいよな?ノープロブレムだ」 「はぁ、まあ」 仕方なく 頷く翼の肩に目黒の手がまわされる。 「なに暗い顔してんだよ。さっソバカス。夜は短いんだぞ?もたもたしてたら、貴重な2人きりの初めての夜が短くなっちまう。ラウンジに飲みに行くか?それとも寝る?」 うっ。 息が止まるかと思った。 コントのセリフかと思った。 それとも寝る? そのコントじみたワードに深い意味を感じるなんて、私はどうかしている。 ただのジョークだ。 苦笑いしながら、肩にまわされた目黒の手を払う。 「はははっ、少し飲みましょう。飲まなきゃ私、おかしくなりそうですから」 「?おかしくなるだと?なんで」 「私個人の話です。チーム長には、関係ありませんから!」 なぜか逆ギレしていた。 馬鹿げたことを考えてしまう自分に無性に腹が立っていた。 再び肩に手をまわそうとしてくる目黒から逃げるようにして、翼は速足でエントランスへ向かって行った。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

65人が本棚に入れています
本棚に追加