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膨れて怒っている翼を見ても、あくまでも余裕がある様子の目黒。
「俺、足が長いから大きいベッドじゃないと、眠れないんだよ。足がはみ出してさぁ。それにいくら仕事だからと言っても、上司と狭いツインルームじゃ嫌だろ?俺は大歓迎だけど。だから、あえてココにしたんだけどなぁ」
目黒は、翼に近寄り思いついたように声を上げた。
「それとも…あっ、アレか?もしかして俺の近くで寝たいから、お前は広々としたツインルームより狭いツインルームの方が良かったのか?」
目黒は翼に向いて、嬉しそうな笑みを浮かべている。
「まさか!!広い方が離れるしっ、いいに決まってますよ」
「じゃあ、ここでいいよな?ノープロブレムだ」
「はぁ、まあ」
仕方なく 頷く翼の肩に目黒の手がまわされる。
「なに暗い顔してんだよ。さっソバカス。夜は短いんだぞ?もたもたしてたら、貴重な2人きりの初めての夜が短くなっちまう。ラウンジに飲みに行くか?それとも寝る?」
うっ。
息が止まるかと思った。
コントのセリフかと思った。
それとも寝る?
そのコントじみたワードに深い意味を感じるなんて、私はどうかしている。
ただのジョークだ。
苦笑いしながら、肩にまわされた目黒の手を払う。
「はははっ、少し飲みましょう。飲まなきゃ私、おかしくなりそうですから」
「?おかしくなるだと?なんで」
「私個人の話です。チーム長には、関係ありませんから!」
なぜか逆ギレしていた。
馬鹿げたことを考えてしまう自分に無性に腹が立っていた。
再び肩に手をまわそうとしてくる目黒から逃げるようにして、翼は速足でエントランスへ向かって行った。
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