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「いえ、あの…意味はなくて」 お互いの肘がくっつきそうになり、それをかわすように翼は脇を締めた。 「あっでも…チーム長は綺麗な顔をしてますね?」 これは、本音だ。 初めて見た時から思っていた。 イケメンだわ?って。 それから、ずっと、いつか本人に言いたかった。 綺麗な顔をしてますねって。 「なんだそれ」 「なんだそれとは、なんですか?素直な感想ですよ」 「おい、ソバカス。いつ、俺がお前に感想くれなんて言ったんだよ。学校の先生でもない限り感想くれとは言わないよな。それに、そんな下手くそな感想文を俺はお前に期待してないから」 呆れたように言ってから、目黒は翼に寄せていた上半身をまっすぐに戻した。 「はあ、そうですか」 「お前から聞きたいのは色っぽいセリフだよ。だってそうだろ? お前は俺の好きな女で、こうやってな、2人きりで雰囲気のいいバーにいたら、お前から期待するのは、少し気になるフレーズとかドキドキする軽いボディタッチだろうが」 目黒は、まるで当然のことのようにそう言った。 聞き流すこともできた。 でも、目黒が口にした『お前は俺の好きな女』って科白が、なぜかしら胸に響いてしまう。 「ん?違うな。ごめんごめん。よく考えてみたら俺のミスだ」 1人で話して1人で謝っている目黒を不気味な生物を見たときのように翼は少し引いて見た。 「ミスって、なんですか?チーム長」 変な人だ。 変すぎて、こっちまで『変』がうつりそうだ。 「ここは俺が努力しないといけない場面だったな。片思いしてんのは、俺の方なんだから。せっかく2人きりの夜なんだし、ここは努力だな」 2人きりの夜。 緊張していた。 このままだとチーム長を異性だと、男だと完全に意識してしまう。 翼は、目黒の視線をまともに受けたりしないように前を向いた。
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