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「お待たせ致しました。こちら当店オリジナルカクテル『奏 kanade』でございます」
バーテンダーが静かにテーブルに置いたカクテルグラス。
ミドリ色が鮮やかに輝くハイセンスなカクテルだ。
「綺麗ですね」
「ああ、カクテルコンペティションでグランプリを受賞したカクテルだ。一応お前も日本酒業界に勤めてるんだから、ここに来たらコレは飲まないとな」
「へー、チーム長って色々ご存知なんですね」
「ごめんなぁ?色んなところで知識が溢れ出ちゃうもんで。わざとじゃないんだ、わざとじゃ」
わざとらしい弁解を大袈裟にする目黒がおかしくて翼は、つい笑ってしまっていた。
「ふふふっ、チーム長って本当に変な人ですね」
「そう? お前に合わせてるからな」
「それ、どーいう意味ですかぁ、全く」
カクテルをひと口飲んでから?を膨らませた翼。
「それそれ」
そう言って目黒は待ってましたと言うように膨らんだ翼の?を指でつまんだ。
「チーム長!やめてくださいよ」
翼は速攻で?を摘んできた目黒の手を払いのける。
「あーあ、やっぱり、これもダメか」
払いのけられるのは前提の行動だったらしい。
呆れて目黒を見ると、まっすぐに見つめ微笑まれてしまう。
圧倒的に破壊力のある目黒のイケメンすぎる微笑みに翼は吸い込まれそうになり、大慌てで頭をブルブルッと振った。
「あー、もうさ、時間が止まんないかな」
「え?」
「お前が俺の隣にいて笑ったり膨れたりするのをさ、ずーっとみてたいなぁ?て思ってな」
目黒は、再び目力を駆使して翼をジッと見つめる。
うっ……。
やばいかもしれない。
胸が苦しい。
なんだか締め付けられるみたいに苦しい。
このままだと、ギリシャ神話のメドューサに覗き込まれたように、カチンコチンの石になってしまいそうだ。
「み、見ないでください」
「あーあ、見るのも摘むのもダメだろ?何ならいいんだよ。お前って本当にワガママだな」
カクテルグラスの細い脚を持つと、目黒はようやく前を向きグラスに口をつけた。
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