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カウンターの席に戻ってから、4杯目のカクテルを飲んでいた。 仮にもお酒を扱う企業トントリーの営業社員だから、翼は普通の女性より酒に強い方だ。と自負している。 だが、今日は勝手が違う。 グラスに沈むアプリコットを眺めながら、翼はトロンとした目で目黒に向いて 「チーム長。私に同情してます?」 と、尋ねた。 一瞬、目黒は何のことだかわからなかったようだが、 「結婚がダメになったりしたから……」 と、翼が付け加えると、やっと意味を理解したようで 「あぁ、全然」と笑った。 「それなら、からかうのはやめにしてくださいよ」 「からかってないだろ。ったく。信用ないなぁ」 「だって……」 グラスを持っていた翼の指先。その下の華奢な手首をそっと目黒の大きな手が包むようにして握る。 ハッと目が覚めたように目黒へ顔を向けた翼を目黒の熱い視線が捉える。 「今は、信じなくても構わない。だが…」 いつもの得意技だ。 目黒の目力には、つい圧倒されてしまい声も出せない。 見つめたままスツールから落ちない程度の力で目黒が翼の腰を抱き寄せた。ぐっと顔と顔が寄って、唇が翼の鼻先に触れそうになっていた。 「山梨翼、お前が好きだ。今すぐ…キスしたいくらいにな」 いつになく真面目な表情。 クラクラする。 このめまいが、まだ少ししか口にしていない4杯目のカクテルに酔ったせいなのか、はたまた、目黒の言葉に酔ったせいなのかは判断がつかない。 翼は、ただじっとして目黒の瞳を見つめ返していた。
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