第一章

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「あんたのその顔、嫌いやわー。」 これは私がいつの間にか聞こえないふりをして、聞こえたからといって気にしていないふりが上手になった言葉。 誰に言われた言葉かって?笑。 それは、あのイヤらしい真っ赤な口紅を塗って爽やかさのカケラもない黄緑のワンピースを着た女。 その女の名前はアトサカ ルミ。 京都の田舎町の御屋敷に住む夫婦の養女。 一人娘として大事に育てられた箱入りお嬢。 何があっても自分が一番じゃないとダメ。 どんなことをしてでも自分の思い通りにしないとダメ。 だけど頭が良くないから、優しくされた男に本気になる。 だから16歳でバカなイケメン金持ちと結婚。 だけど頭が良くないから、友達に誘われて飲みに行った店で知り合ったド貧乏ブ男に優しくされて駆け落ち。 そしてバカなイケメン金持ちと離婚してド貧乏ブ男と結婚。 「奥さん綺麗やねー。美女と野獣カップルや。」 玉の輿よりも、その心地よい言葉を選んだ女。 よく働く旦那と無計画に子供を作ったわりには年子の娘2人とド貧乏に必要のない後継ぎの息子1人。 頭は良くないけど人並みに掴んだ女の幸せ。 きっとその女の養父母も幸せだったでしょうね。
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