第一章

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小学五年生のある日の夜、父がいつものように遅くに帰宅した。 「おーい、まだ起きてるか?」 珍しく父が呼び起こす。 あたしは妹と弟と3人で父の元へ。 そこには父の腕に抱かれた小さな子犬。 かわいいー!!! 動物好きの父は嬉しそうにあたし達に子犬を抱かせた。 「これから家族の一員になるからよろしくな」 あたしはとても嬉しかった。 兄弟3人で相談して名前をモナと付けた。 フワフワでモコモコして何とも言えない可愛さに私は言葉にできないほど幸せな気持ちになった。 これから毎日モナと過ごせる!! 「犬を触った手で家の物にあちこち触らないで!」 後ろから凍りつくような言葉。 あの人だ。 汚いモノを見るような目でジッとこちらを睨む。 この人はこんなに可愛いモナに近づかず、こう言い放った。 「人間以外は嫌い。早く外に出して!」 それから毎日モナの世話は忙しい父に代わって子供達の仕事となった。 だけどあたしはモナの世話をするのが毎日楽しくて仕方がなかった。 モナ、ずーっと可愛がってあげるからね。 モナがウチに来て半年後のあたしの誕生日。 いつものように学校から帰って一番にモナの小屋を覗く。 モナがいない。 「犬はもういいひんで。保健所の人に来てもらって連れて行ってもらったわー。」 なんで?なんで?! あたしは泣きながらあの人に問い詰めた。 あの人はタバコを加えながら、あたしをぶった。 「犬の世話してる時間あるならもっと勉強して。私を恥じ欠かすような人間になるならあんたも保健所連れて行ってもらうでー。」 あの人とあたしの間にあった何かが壊れる音が聞こえた瞬間だった。 なぜかその日を境にあの人はあたしを殴るようになった。
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