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朝から驚きと怒りで身体の震えが止まらない。
わたしはどちらかというと、服装も髪型もシンプル派だ。それに、登校中に外でホットドッグをかじりながら歩く破天荒キャラでも決してない。
至って真面目な、普通の学生だ。
それなのに・・・
「ジルはさぁ、勿体ないと思うんだよなぁ。磨けばこんなに可愛くなれるのに。そうだ、よく見とけよ?」
そう言って意味ありげに微笑むと、フェイは何を思ったのか、歩きながらホットドッグをまた美味しそうに頬張り。
そしてケチャップがついた右の口角を、舌を出してペロッと舐めた。
その瞬間、わたしは見た。
見てはいけないものを、目にしてしまった。
そして聞いてはいけないものも、聞いてしまった。
「やっべ。あの子超可愛いんだけど」
「あぁ、タイプだわー。それに、なんかエロくね?ホットドッグとか」
「ケチャップ舐めるのとか、ヤバいでしょ。まーでも、彼氏持ちだしなー」
フェイの姿をしたわたしとわたしの姿をしたフェイの横を通りすぎていった他校の男子達が、わたしの姿をしたフェイをガン見し。
そして、通り過ぎた直後にそんな風に喋っていたのを。
わたしは歩を休ませることなく、わたしの姿をしたフェイの顔を横目で睨んだ。
すると、わたしにプットイン中のフェイは、わたしに同意を求めるかのように無邪気な笑顔で促してきた。
屈託ない笑顔の自分を、この位置で、しかもこの今の感情で見つめるのは・・・複雑以外の何物でもない。
「なっ?この格好とホットドッグの破壊力、ハンパないだろ?」
わたしの姿をしたフェイのその言葉を耳にした瞬間、わたしの中で・・・いや、正確にはフェイの身体の中にあるわたしの心の怒りスイッチが、MAXになった。
わたしは無言のまま立ち止まると、わたしに合わせるかのように立ち止まったわたしの姿をした憎きフェイの頭にめがけて、思いっきりふりかぶった。
「ん?どうした、ジル?じゃなかった、フェイ?」
ーー中身わたし、外身フェイの頭を。
ゴンッ。
「だああぁ、いってええぇっ!!」
「痛ああぁいっ!!」
神様、お願いっ。
一刻も早く元に戻して、わたしの心と身体!!
ーーENDーー
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