295人が本棚に入れています
本棚に追加
駐車場に向かって歩き、一度ゲートを通り抜けるために再入場のスタンプを押してもらう。
先を歩く娘と女の子は何か楽しそうに話している。
私は父親と話すのも気が引け、黙って歩いていた。
と、そこに携帯電話の着信を知らせる振動を感じた。
画面を見ると息子だ。
私はスワイプして耳に当てる。
「もしもし、何?」
『あ、お母さん、行くのもう少し遅くなる。
サークルの先輩が昼メシおごってくれるって言うから』
息子の申し訳なさそうな声が聴こえ、私は思わず大声で「え~?」と聞き返した。
「ちょっと、お弁当どうすんのよ!
昨夜っていうか、今日までかかって作ったのに!」
『だからごめんって。
食べ終わったらすぐ行くから。
また連絡する』
息子は、後ろから誰かに話しかけられたらしく、早口で言うと切ってしまった。
「何?お兄ちゃん?」
振り返った娘が訊いてくる。
私はスマホをバッグにしまいながら頷いた。
「遅くなるって。
ったく、勝手なんだから…」
大学生なんてそんなものだと思いながらも、私は憤慨する。
最初のコメントを投稿しよう!