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「そうですね、今でもうちの息子のようなのはちょっと珍しいようですよ。
周りの男の子をお母さんたちは、一緒に出掛けてくれないよって言ってますから」
我が家は、父親がいるようでいないような家庭だから。
息子は母親の私や妹に気を遣うんですよ。
と言いそうになって慌てて口をつぐむ。
初対面の人に、ここまで家庭の事情を話す必要はない。
そんな話をしているうちに車にたどり着く。
娘の着替えとジェラトーニのぬいぐるみ、それから大きなクーラーボックスを取り出す。
「時間的に、もうお昼にしないとだね。
お兄ちゃんはお弁当要らないって言うし、これ頑張って食べてね」
私がクーラーボックスを指さして言うと、娘は「えーっ!無理!」と大きな声を出す。
「朝ごはん、ハイカロリーだったし!
だいたい、お母さんいっつも作り過ぎなんだよ」
「だって…足りなかったらどうしようと思うと…」
私は言い訳する。
子ども達、殊に息子は中学生になったとたんに、満腹中枢が壊れたのかと思うくらいたくさん食べるようになり、私はいつも「足りなかったら大変」という焦燥感で作りすぎるのだ。
「すごい…これお弁当が入ってるの?」
とお嬢ちゃんが目を丸くしてクーラーボックスを見つめている。
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