夫との話

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 体力が著しく落ちていて、立っているだけで精一杯のような状態だったので、夫に手続きや会計などをすべてやってもらって、夫の運転する車に乗って帰宅した。  案の定、一日いなかっただけなのに、家の中が何となく荒れている。  私はエアコンのスイッチを入れ、重い身体を引きずるようにして片づけを始めようとする。  「ちょ、何やってんだ休んでろって言っただろ」  車をガレージに入れてからリビングに入ってきた夫が慌てたように私を制止する。  「だって…」  「俺がやるから。  何のために休み取ったと思ってるんだ」  ソファの上に脱ぎ棄てられたパジャマをどけて私を座らせ、夫はコーヒーを淹れ始める。  私は次第に暖まってくる見慣れた部屋を見回して、なんだかホッとしてソファの背に寄り掛かって目を閉じる。  小西くんが遊びに来てくれて、子供たちや夫も楽しそうに話したり遊んだりしたのが遠い昔のことのようだ。  大晦日に私がこのソファに座って、松永さんに何の気なしに送ったグリーティングカードから端を発して今につながっている。  …これから、どうなるんだろう。  「…深雪?疲れたか?  すぐに寝るか?」  心配そうに声を掛けられて、私は目を開ける。  「ううん、コーヒー飲む」  私が言うと、夫は両手に持ったマグカップをひとつ私に渡して、自分はもうひとつを持ったまま、ダイニングの椅子に座る。  「昼飯、どうするかな」と夫はマグカップを口に持って行ってひとりごちる。  「直樹は?」  私は、春休み中の息子はどこにいるのか判らなかったので訊いた。  「サークル行ってからバイトだとさ。  弁当がないからって、昼食代俺から千円せしめて行った」  ちゃっかりしてるよ、と夫は顔をしかめて言う。  私はふふ、と小さく笑う。  温かいコーヒーを少しずつ飲んでいると、心も身体も不思議と落ち着いてくる。
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