夫との話

6/8

291人が本棚に入れています
本棚に追加
/359ページ
 夫から聞いた話は、特に子供たちの私たち夫婦に対する見解に関しては、とても衝撃的過ぎてすぐには受け入れられない。  松永さんを好きになってしまったことで、愛情はもうないとは言え、夫を裏切る形になってしまって申し訳ないとは思う。  誠実な妻でなかったという点では、私も夫と同じだ。  実際、中山先生と私がつきあってると誤解した夫は夫で、それなりに悩んで早く帰ったりして歩み寄ろうとしてくれてたんだし。  夫に対して言い訳できるような状況ではない。  私は、誠実にならなければいけないと思う。  贖罪の意味も込めて。  いろいろと考えながら目を閉じているうちに、いつの間にか寝てしまった。  夫が私を抱き上げようとして四苦八苦しているのに気づいて、慌てて起き上がる。  「やっぱり寝てるとさすがに無理だなぁ。  しっかりつかまってろ」  と言って、嫌がる私をお姫様抱っこする。  そのまま2階まで運んで、ベッドの上に寝かせてくれた。  いつの間にか部屋が暖められている。  「昼食作るから、少し寝てろよ。  まだ具合悪かったのに、無理に話をさせて悪かった。  落ち着いたらまた話そう」  と言って上掛けをかけてくれる。  私は戸惑いながら、黙って頷いた。  「許して…くれるの?」  声が小さくなってしまって、聞こえたか不安だったけど、夫は私の額を大きな掌で撫でた。  「最初からやり直そうって言っただろ。  20年間の穴を埋めるのは大変だと思うけど…」  
/359ページ

最初のコメントを投稿しよう!

291人が本棚に入れています
本棚に追加