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「すみません!大丈夫ですか!」
女の子の父親らしき人が走ってきて、頭を下げた。
「こういうところに慣れてなくてはしゃいでしまって…すみませんでした。お怪我はありませんか。
ああ、服が濡れてしまいましたね、どうしよう」
女の子の頭に手を置いて一緒に頭を下げながら、娘の恰好を見てオロオロしている。
私は可笑しくなって「大丈夫ですよ、着替えがありますし」と笑いながら言った。
娘も「あたしは大丈夫です。…あなたは?濡れなかった?」と泣き出しそうな女の子を気遣っている。
女の子は首を横に振る。
父親は尚も慌てたように上着のポケットから財布を出す。
「クリーニング代、お支払いします。
あ、あと、飲み物とお菓子の代金も」
父親の真剣さに、私もちょっと慌てた。
「本当に、大丈夫ですよ。
今日は夜までいるつもりで、夜は冷えるから娘の着替えを用意しているんです。
車まで取りに戻れば良いだけですから」
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