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「あ、あのっ!」
背後から声がかかる。
振り向くと、すぐ後ろに女の子が立っていた。
「? まだ何か…」
私が問うと、女の子は娘を見て必死な口調で言った。
「ジェラトーニのお洋服を着せ替えるところ、見せてもらっていいですか?
本当に欲しいか、それ見て決めようと思うんです」
「こら、買ってあげるから!
ご迷惑だからやめなさい」
父親が慌てたように制する。
女の子は父親を振りかえって、言い募る。
「でも、今日はお母さんも裕太も来られなかったし、真波ばっかりって不公平だよ」
私と娘は思わず顔を見合わせる。
どうする?と私が目顔で尋ねると、娘は肩をすくめた。
「あたしは別にいいよ」と女の子に言う。
女の子はぱっと笑顔になった。
「ありがとう!」
父親は恐縮してまた頭を下げる。
「ワガママな娘で…本当にすみません」
いえいえ…と私は答え、しかしその先何と言っていいか判らず、とにかく駐車場へ向かって4人で歩き出した。
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