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頭上に青々と茂る木の葉を散らし、熊の姿をした巨大なシシト獣が飛び去って行く。
待て、と叫んだカララクは、なぜか抱え込んでいたテンライの身体を思い切り地面に叩き伏せた。そしてマキリとともに、飛び去るシシト獣を追っていく。
地面に這いつくばったテンライが、恨めしげなうめき声をあげている。したたかに顔面を打ちつけたらしい。痛みをこらえることに必死で、すぐには立ち上がれないようだった。
「ご無事か? 手をお貸しいたそうか」
あまりに痛々しい様子なので放っておけず、屈み込んでテンライに声をかける。すると、マキリの背に乗って今にも空へ駆け上ろうとしていたカララクが、急に方向を転換させたかと思うと急ぎ足でこちらへ戻ってきた。
面を被った顔を斜めにうつむけながら、カララクは上着の袖から腕を抜く。
「お召しなされよ」
短く言って上着を私の肩にかけると、再び走り出そうとする。
「待ってくれ! 私もともに行く」
不届き者に荷を盗まれたのは、ほかでもない私の失態だ。私自身の手で取り戻すのが筋だろう。
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