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「灯ちゃんねー、なんかすっごいプンプンしてて-。最低な破廉恥野郎には会いたくないから追い返してって頼まれてるの。だから、ばいばいせーま君。ご愁傷さま」 「ちょちょっ、ちょっと待って下さいっ、そこを何とか!」  陸さんの抑揚のない声でつらつら述べられると、事態がさらに悪化した気がする。このままあっさり帰ってなるものかと思い、必死に頼み込んだ。 「えー、どうしよっかなぁ。せーま君と灯ちゃんを応援してる私としてはなかなかねー、複雑なんだよぉ。いったいどんな破廉恥したの?」 「そこを何とかお願いします! 灯に会わせて下さいっ」  質問には聞こえないふりをして、頭を下げた。手を擦り合わせもした。けれど、「どんな破廉恥したの」「ねぇ破廉恥ってなに」としつこく責めるので……。 「え? なに? 公開処刑?」 「いやいや公開告白っ!」    の、ようなもの……。と弱々しく付け足したのは、ご近所さんと思わしき主婦がクスクス笑いながら通り過ぎていったから。  しかし、恥ずかしい思いをした代償に重たい扉は開かれた。 「ふぅ~ん。へぇ。まぁ、貸し一つね」  なのに、さらなる代償を約束させられた。嫌な予感はしたが「じゃぁいいです」と言って帰れるわけがない。きちんとお礼を述べてから、蒼さんにご挨拶した方がいいでしょうかと訊ねる。というのは建て前で、留守かどうかの確認がしたかった。     
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