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 ◆  灯は泣き虫で甘えん坊のくせに、誰よりも心が強くて優しい。それに、無意識下で俺は灯に引け目を感じていたんだと思う。  付き合って、くれている。俺を受け入れようと、してくれている。  惚れた弱みと言えば聞こえもいいだろう。でも、灯は俺と同じ位置に立っていたんだ。真剣に俺のことを、二人でいられる先を考え、心を痛めていた。いつか終わるかも知れないと怯えながら、笑っていたのかも知れない。だから、俺の無神経な言動が許せなかったんだ。  灯に追い出された後も、しばらく家に帰れずマンションの近くにいた。蒼さんが鼻歌交じりで入って行くのも遠目で確認した。  灯が窓を開けてくれるわけないのに、そんな都合の良いもしもを信じて見上げ続けた。  夜風が肌にも目にも凍みる。無数にある家の明かりと、もっとその上に広がる星の光が重なるほど、呆然と立ち尽くしていた。  もう一度灯に会いに行きたいが、さすがに無理だろう。今は何をやっても裏目にしかならない。頭を冷やすべきだと思い、ようよう駅へ向けて足を進めた。     
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