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 俺も相手も日本語が理解できないのかと思った。だって、どうして俺が謝られるんだ。  むしろ、非難して欲しかった。 「気持ちわりぃもん見せちゃってさ」  ハッ、と息を呑む。  顔に水でもぶつけられた気がした。  あの時、自身の放った冷たい言葉が甦る。 「あんな場面に遭遇して、災難だったよな。でも、助かったから。ありがとう。ごめんってずっと言いたくて。何となく見覚えはあったんだけど、名前とか分らないし……。ずっと夏休み中、あんたのことが気になってたんだ」  俺も同じだと即座に返したい。  いや、それよりも誤解を解かないと。 「別に、あんたが気持ち悪いって言った訳じゃない。あいつらに言ったつもりだった。勘違いさせて悪かった」  それと多分、俺自身に。  高校二年になって、彼女を毎日のように訪ねてくる須田を目にした。ほとんど一目惚れと言っていい。だからこそ、絶対に関わるまいと決めた。  中学時代、俺は母を絶望のどん底へ叩き落とした。俺にとっては遊びの延長だったが、受けた報いは割に合わないものだった。決して開いてはいけない扉をこじ開けてしまったのだ。  否定したかった。自分はそうではないと。だからこそ、女子とよく遊んだ。数をこなせば、自分は正常だと世間に見せることができた。何よりも母の目に。     
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