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「ね、ねぇ、せーまのお父さんすっげ、カッコイイな?」
遅れて靴を脱ぎ、廊下を進むと灯がさっそく父を褒めちぎる。なんだか……あまり嬉しくない。
「せーまも年取ったらああなるのかな?」
「……さぁ」
なんだよ灯まで。
ややぶっきらぼうに返事をしたら、腕を引っ張られた。リビングの扉まであとわずかって距離だった。
「なに?」
「な、なにって。だって、なんか急に機嫌悪そうだから」
「……そんなことない」
「本当に?」
嘘かどうかを探るように、灯がじっと俺を見てくる。そんな真剣な目を向けられると、悪戯したくなる。
「えっ、ちょっと!?」
掴まえられた腕を引っ張って、灯を隅へ追い込んだ。繋がった手を壁へ縫い止め、腰に抱きつきながら一気に唇を奪った。
「ふぅぁっ……、んっ」
はっきり言って、俺の身体も心も灯不足だ。ここ最近は慌ただしく、二人きりで過ごせる時間もわずかで、こういうスキンシップもご無沙汰だった。
しかし、今ここで事に及ぶほど頭はいかれていない。短い口付けだけで、灯を解放した。
「もっ、ちょっと、いきなり何だよ」
濡れた唇を拭いつつ、目元まで赤らめた灯に睨まれる。それを横目でチラと見てから、溜息が零れてしまう。
「早く灯とエッチしたい」
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