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力強く叫んでいた。
「え?」
きょとんとする灯に、俺は必死に頼み込んだ。
「そういうことは一人でやるもんじゃない。俺がやってやるから、灯は何もしなくていい」
「え、え……でも、恥ずかしいんだけど」
「そんなわけないだろ! みんな、どのカップルもやってることだ。当たり前なんだよ! そのくらいのこと恥ずかしがってどーする!? その先があるんだぞっ」
「そそ、そう……だけど……。そういう、もんなの?」
「あぁ!」と力一杯頷くと、灯は考え込むのもそこそこに「そう、なんだ」と曖昧に頷く。
そして、顔を斜めに背けてからぼそり。
「じゃぁ、せーまに全部任せる。いつでも、いいよ」
思わず抱きしめたくなる! そんな場面で、「ちょっと」と硬質な声が投げ込まれた。
「あなたたち何やってるの? 私のお料理が冷めるでしょう?」
喉の奥でひっ、と引き攣った声が出た。
仁王立ちする蒼さんにぺこぺこ頭を下げて、賑やかな食卓へ急いで着いた。
今夜の主役は俺でも灯でもなく、父だった。双子に挟まれ、質問攻めをされつつお酒をどんどん飲まされていた。酔い潰れた父をどちらの部屋で休ませるかで口論が始まったりする。
そんな風に、夜はふけた。
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