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 揶揄や皮肉も混じっているが、どうでもいい。面白がられるくらいが丁度いい。    ◆ 「せーま君。次の金曜、蒼姉用事があって、夜遅いよ」  その有難い情報を俺にもたらしたのは、これもまた貸し二つ目ね、と既に取り消しできない状態にもって行った陸さんである。がしかし、その日はちょうど終業式。つまり決行するには都合が良すぎるくらいに、良い。確か、父も出張で帰りがかなり遅くなると嘆いていたし。  というわけで、終業式を昼に終えるや早々に灯を学校から連れ出した。これからは時間との勝負。何とか九時頃までには灯を無事に……、家に送り届けなければ発覚してしまう。  が、その前に灯に聞かせたいことがある。 「せーま、どこ行くの?」  灯が不思議に思うのも当然。駅構内のお花屋さんで仏花を購入し、いつもと違う路線の電車に乗ったから。  普段なら目にしないような畑がある、のどかな道を歩きながら訥々と説明を始めた。 「父さんの不倫相手……(すばる)さんて言うんだけど、あのお寺で眠ってるんだ」  蛇行した道の先に、ご本尊のある瓦屋根が見えた。取り囲むよう群生する松の木の下に、墓場が広がっている。     
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