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「三か月でいいから、傍にいて欲しいって」  繋いだ手を、どちらともなく強めた。隣で灯が鼻を啜っている。  誰を責めるでもなく、誰の心にも寄り添いたいと思った。  三度目になってようやく、本音を口にした昴さん。  家族がいながら過去に捕らわれ続けた父。  わずかでも、他人に父を貸したくなど無かった母。  自分と灯で当てはめてみるとよく分かる。灯の幸せを願って嘘を吐いたり。灯の負担になりたくないから忘れようと努力したり。愛しているからこそ、灯がひと時でもよそ見をするのが許せなかったり。   「父さんはその願いを叶えたくて、正直に母さんに話したんだ。必ず帰って来るから、三か月だけ許して欲しいって」  余命いくばくもない、それこそ三か月もつかどうかも分からない。 「でも、母さんは許さなかった。行くなら、離婚届にサインしろって突き付けた。きっと、試して確かめたかったんだ。家族を選んでくれるはずだって」    父も馬鹿だと思う。正直に話さなくても、三か月だけ単身赴任するだとか、適当な嘘を吐けば良かったのに。 「どうしても許して欲しくて、父さんは昴さんへの想いを打ち明けたんだ」  当然受け入れられなかった。汚い、と蔑まれた。     
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