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◆
灯が拗ねてしまった。
「あかり」
二人でお風呂に入って、宣言通り俺が責任を持って灯の身体を解した。最終的な局面はベッドの上だとそりゃ、決めている。けど、素っ裸で風呂だぞ? 多少暴走するのも仕方がないというもの。
「あ、あんなのっ、聞いてない!」
灯をバスタオルで包んだまま自室のベッドへと誘い、そのまま押し倒す。そういう流れのはずだった。なのに、もう十分以上灯にしがみつかれて身動きがとれない。引き剥がそうとすると首を絞める勢いで拒まれる。
「せっ、せーまの嘘つき。春姉の話とちがうっ」
叫んだ拍子に咽たので、背中をぽんぽん叩いてやる。
ぐすっ、と鼻を啜った灯は、俺の肩に顔を擦りつけて呻った。
「ええと、灯。機嫌直してよ。灯の顔が見たいな」
「……やだ」
やれやれ。一体どれが不味かったんだ。
溜息を吐きつつ、担いだままの灯をあやすようにゆっくり身体を揺らした。まるで子守りをする主婦の気分だ。いや、腰に巻いたタオルの下が辛いので、その例えは似つかわしくない。
「うーん。どれが嫌だった? 灯が嫌なことはもうしないから。な?」
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