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 どうやら須田に友達認定されたようで、見かける度に声を掛けられるようになった。放課になるとしょっちゅう顔を見せるので、寝たふりや購買へ行ったり、適当な女子と付き合ってやり過ごした。 「あれ、せーま寝てる?」   いっそ本気で眠りたいと切実に祈ったのはまだ、三限目の放課だった。 「灯ちゃん最近よく来るよね。あ、まさか、クラスでいじめられてるの?」 「な、ないよそんなこと。真智は心配しすぎ」 「ふぅん。まぁいいけど。ていうか、宮内くんが何も言わないからあえて聞かなかったけど、どうしてせーまって呼ぶの」  そういえば、訂正し忘れていた。 「だって、せいま、だろ? ほら、そこのノートに名前書いてある」 「しずま、って読むのよ。恥ずかしいわねぇ」  やや間を置いてから、灯は声を荒げた。 「う、うそ! だって、何も言わないし! ……あ、わざと? 俺、からかわれてる?」  そんなつもりは無かったけれど、今、どんな顔をしているのかは気になる。 「いいよ。俺はせーまって呼び続けてやる。訂正するまでずーっと!」  肩が揺れそうなのをぐっと堪えた。 「それより灯ちゃん、今日一緒に帰れないの。いいかな?」     
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