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近頃では真智とも話すようになり、地味な印象の彼女が実に思慮深く、気遣いのできる女子だと知った。恋人同士でないと分れば、二人の関係は姉と弟のように見えてきた。ただの幼馴染みだと今では理解している。
机を合わせ、それぞれ弁当を広げていく。
須田の色とりどりの弁当にはいつも目を奪われた。
今日は三食丼らしいが、見たところ五色はあった。あのピンクとオレンジは何だろう。鮭か? などと、どうでもいいことを考えながら、俺は購買のパンを囓った。
須田は主食より先にウサギの形をした林檎を手に取り、前歯でしゃりしゃり囓りだした。唇の皮が濡れ、時折上唇をぺろっと舐める仕草にソワソワさせられた。
じゃ、なくて!
いけない方向へ妄想が膨らみかけ、緊急停止させた。
「おんやー、最近君ら仲良いね?」
チョココロネを噛み千切っていたら、ペットボトル片手の白井が混ざってきた。
白井は一年の時、須田と同じクラスだったらしい。
「そういえば、灯ちゃんって今年も女装してくれちゃう? 俺の友達がさ、あ、男子校の奴なんだけど。また見たいってさ」
「し、しない。あの後、最悪だったし」
灯は濡れた指先を舐めかけて、真智に尽かさず注意をされた。渡されたウェットティッシュで丁寧に拭きながら、なぜかチラチラと俺の顔を見てくる。
「せ、せーまって……俺の女装みた?」
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