3/5

386人が本棚に入れています
本棚に追加
/148ページ
 近頃では真智とも話すようになり、地味な印象の彼女が実に思慮深く、気遣いのできる女子だと知った。恋人同士でないと分れば、二人の関係は姉と弟のように見えてきた。ただの幼馴染みだと今では理解している。  机を合わせ、それぞれ弁当を広げていく。  須田の色とりどりの弁当にはいつも目を奪われた。  今日は三食丼らしいが、見たところ五色はあった。あのピンクとオレンジは何だろう。鮭か? などと、どうでもいいことを考えながら、俺は購買のパンを囓った。  須田は主食より先にウサギの形をした林檎を手に取り、前歯でしゃりしゃり囓りだした。唇の皮が濡れ、時折上唇をぺろっと舐める仕草にソワソワさせられた。  じゃ、なくて!   いけない方向へ妄想が膨らみかけ、緊急停止させた。 「おんやー、最近君ら仲良いね?」  チョココロネを噛み千切っていたら、ペットボトル片手の白井が混ざってきた。  白井は一年の時、須田と同じクラスだったらしい。 「そういえば、灯ちゃんって今年も女装してくれちゃう? 俺の友達がさ、あ、男子校の奴なんだけど。また見たいってさ」 「し、しない。あの後、最悪だったし」  灯は濡れた指先を舐めかけて、真智に尽かさず注意をされた。渡されたウェットティッシュで丁寧に拭きながら、なぜかチラチラと俺の顔を見てくる。 「せ、せーまって……俺の女装みた?」     
/148ページ

最初のコメントを投稿しよう!

386人が本棚に入れています
本棚に追加