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 密かに須田を見ていたことを悟られまいと、慌てて視線を外し、「知らね」と興味なさそうに告げた。すると、須田はホッとしたように笑い、軽口を叩く。 「やばいよ? 見たら惚れちゃうかも」 「……馬鹿らし」  一瞬、息が詰まったが大丈夫。きっと自然に聞こえたはずだ。  騒がしい心をいつものカフェオレで落ち着かせよう。あぁ、もう少し砂糖を入れたい。 「それがさ、まぁ前からもあったことだけど。去年の文化祭から後、すごいからかわれてさ。男にすげー言い寄られたんだ。付き合って欲しいとか、顔だけ見てたらやれるとか言われて」  吹き出しかけて、盛大にむせた。  俺の慌てっぷりに須田は指を向けて笑っているが、美術室の一件を知っているからちっとも笑えない。下手な強がりしやがって。逆に痛々しいんだよ。 「襲われないように気をつけないとねぇ」  くそ、白井。それ以上おかしな事を言ってくれるな。 「はは、本当そうなんだよ。男ばっかにモテて女子にはからっきし」 「女子にモテる秘訣ならコイツに聞けばいいじゃん? な、宮内」  そのやかましい口にテニスボールでも突っ込んでやりたい。カスタードコロネを食べることに専念してやる。無視だ無視。 「つか、真智ちゃんと灯ちゃんって付き合ってるんじゃないんだぁ」  白井も俺と同じ勘違いをしていたようだ。ふん。     
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