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放課後、生徒がまばらになる教室で俺は気怠げにスマホを弄くっていた。
未読メールの件数に辟易するが、返す気はないので電話番号の交換は一方的なもの。つまり、今誰のメールを読んでいるのかサッパリ分からない。愛の告白からデートのお誘い。恨み言や泣き言のメールを次々と削除し、唯一といって言い登録相手、母からのメールを見た。
『今夜は遅くなります。お金はいつもの所です。出前でもとりなさい』
こういうことは良くあるし、かえって気楽で助かる。
「一人なのか?」
間近に声が聞こえたので視線を上げると、目と鼻の先にリスがいた。
「び」
「び?」
伏せ気味だった顔をこちらへ向けると、睫の長さに驚かされた。それにだ、瞳が大きすぎる。自分の間抜け面が嘘偽りなく、ガラス玉のようなそれに映し出されていた。
「びっっくりするだろ!」
素早く距離をとると、椅子に自分の足が引っかかって危うく背中から倒れそうになった、のを、何とか堪えて無様な体勢になった。
「あはは~! せーまのそんな顔初めてみた」
不躾に指まで差してきやがる。
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