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まだ自分は幼くて、当たり前のように両親が傍にいて。母はお洒落をして父に肩を寄せ、微笑みかけていた。でも、父の隣には別の影が寄り添っていて……。
「やっだ! 放せっ、やめっ、て」
頬を打たれた気がして飛び起きた。
ほんの刹那、今の声が自分のものだったかと混乱し、口に手を当てる。
「ふぁっ、ひっ……」
切羽詰まった泣き声を、数人の男がねじ伏せている。そんな様子が耳に届いた。
あぁ、なんてツイてないんだ。
静かに過ごせる数少ない場所を、よりにもよって虐めの会場にされた。
別に、正義感を振りかざすほどの崇高な精神など持ち合わせていない。がしかし、このまま聞き続けるのは目覚めが悪く、何より腹立たしい。
「何してんだ」
突如、思ってもない方向から不遜な声を聞き、悪人どもは凍りついた。しかし、それはこちらも同様。なぜなら、奴らは男を組み伏せていた。それも三人で。ただ、思っていたような苛めとは気配が異なった。
一人がベルトに手をかけ、汚いものを取り出そうと躍起になっていた。残りの二人は、じたばたと暴れる足を押さえつけたり、被害者自身のシャツを口へ突っ込ませ、泣き声を塞いでいた。
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