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 教室に残っていた生徒の視線が肌に突き刺ささり、羞恥に染まりかけた頬を誤魔化したくてリュックを引っ掴み、廊下へ出た。 「待って。せーま怒った? 謝るから、な」  謝らなくていいから付いてくるな。ほっといてくれ。 「なぁ、今日さ、俺の家でご飯食べない? 良い考えだと思うんだ」  その突拍子もない誘いは俺の足を止める威力があった。  隠しようのない溜息を吐いて、いざ振り向く。 「なんで、いきなりそうなるんだ。断る」  即座に断られた須田はムッと口を尖らせる。 「だって、今夜お母さん遅いんだろ? 晩飯一人じゃ寂しいじゃん」  はい、とスマホを渡された。なんてことだ。落としたことにも気付かなかった。 「勝手に読むなよ」  礼を言うどころか文句をつけて、さっさと下駄箱へ向かう。その間も質問は続いた。 「お母さんは仕事で遅いの? 何の仕事?」 「……看護師」 「へぇー。あれ、そいや、お父さんは?」 「死んだ」  本当は死んでいない。  でも、ほんの三年前までは交通事故で死んだと聞かされていたから平気で嘘を吐けた。  相手を黙らせるには有効な手段だ。  案の定、足を止めた灯りをどんどん突き放せた。 「やっぱ、今日家来てよ」       
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