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靴を履きかけて振り向くと、須田が仁王立ちをしていた。まるで戦いを挑むように。本当は勇気を出して俺を誘っているのだろう。目元がやや赤いし、両の拳が震えている。
だからどうして、と俺の顔には書いてあるらしい。
「だって、一人は寂しいじゃん。俺もその……両親いないけど、姉ちゃんが三人いてね、すげー口うるさいんだ。蒼姉はバツイチで、心配症だけど料理が得意でね。春姉はがさつで口悪いけど働き者で、大黒柱なんだ。陸姉はカメラオタクでハッキリ言って変態なんだけど、頭がいいからよく勉強みてくれるんだよ」
俺のこの、迷惑そうな顔が須田には見えないらしい。まだ続ける。
「だから、うっとうしいくらい世話やいてくれるから全然寂しくなくて。俺のせいで父さんも母さんも死んだのに、責めたりしないし……い、いや。そういうことじゃなくて、俺が一番言いたいことは、その……」
止めてくれ。
今より須田のことを考えてしまうから、情報を増やしてくれるな。
大体、弁当の中身を見ればどれほど大切にされているか容易に分かる。
「せーまと、友達になりたいんだって!」
まるで愛の告白をされたような錯覚を起こし、俺は一時夢をみた。
「友達じゃないって、昼休みの時言ってただろ? 本当はショックだったんだからな」
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