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風呂から出ると冷えたカフェオレを飲みながら、二階の自室へ向かう。点けっぱなしだったテレビをぼうっと眺めた。
そういえば、十時から始まるドラマが面白いと須田が話していた。何気なくチャンネルを変えるが、内容を理解しようとは思えない。ヒロインは駅や店頭の広告でよく見かける気がする。
アイツはこういうのがタイプなんだろうか。
清楚、というよりも目つきの鋭い凛とした女優だ。
まぁ、須田の隣には控えめな女性より、ぐいぐい引っ張って世話を焼いてくれる年上のがいいだろう。だって、須田を守ってもらわないと……違う。
違う違う。俺は何を考えてるんだ、くそ。
必死に意識を別の次元へおしやった。テレビを見据えてボーッとしていたら、どこかで生きているだろう父のことを考え始めていた。
写真の一枚だって家にはない。物心つく前にはもういなかったので、顔も知らなかった。仏壇も遺影もないことが不自然だと言えば、「思い出すと辛い」の一言で幼い自分は納得していた。
実は不倫の果てに駆け落ちしたと知らされたのが、三年前。
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