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「蒼姉、陸姉、せーまなら大丈夫そうだろ? 学校一のモテ男だからゲイの心配もない。絶対、今度こそ友達になれると思うんだ」
お手製クッキーを携え、向かい側に腰を落ち着けると、蒼さんはまた俺に目を据えた。正確には、睨まれている。もっと言うと、詐欺師を眼光だけで撃退できると本気で信じている、そんな力強い眼差し。
「むせてるけど大丈夫?」
「本当はゲイなんでしょ」
俺を心配するふりをして値踏み続ける蒼さんと、シャッターを押しながら爆弾を落とした陸さん。
いきなり核心を突かれた俺は関節という関節、その他諸々の神経を凍りつかせた。
「な! 失礼なこと言うなよ陸姉っ」
「灯ちゃんに近付く男って基本そうだと思った方が良いよ。みんな狼なの」
「そうよそうよ。いつも友達のフリして近付くんだから、騙されちゃだめよ。今まで何度非道い目に遭ったと思ってるの? 友達なんかいなくてもお姉ちゃんがいるからいいじゃない。ね?」
灯は小声で「や、やめて」「ちょっと」と、二人の姉にそれ以上余計なことを喋るなと人差し指を立てる。そして俺の反応を逐一気にした。
「せ、せーまは違う! だいたい、俺の方から友達になりたいって近づいたの。せーまからじゃないし!」
灯は座っているのも落ち着かないのか、急に立ち上がり、声も鋭くなった。
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